アレルギー科の主な対象疾患
アレルギー性鼻炎(通年性アレルギー性鼻炎)
ダニやハウスダスト(ホコリ)などによる通年性アレルギー性鼻炎と言われます。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが特徴です。
【出展】鳥居薬品株式会社「よくわかる!アレルギー性鼻炎BOOK」より
くしゃみと鼻水をまとめて「くしゃみ・鼻水型」とし、鼻づまりが他の症状に比べて強いときは「鼻づまり(鼻閉)型」、この両者が同じくらいのは「充全型」に分類されます。
通常、私たちは鼻で息を吸うので鼻水と鼻づまりで日常生活が損なわれます。外気が乾燥していても、鼻を通ることで空気に湿度が加えられて体内に入りますが、口呼吸になると乾燥した空気がそのまま体内に入り感染症などのリスクが高まります。
花粉症の鼻水は、かぜなどの感染症の鼻水のように粘り気があるものではなく、涙と成分がほとんど同じなので、無色で粘り気がなくサラサラしていて、すすっても戻らないのが特徴です。くしゃみや鼻水などの症状により、頻繁に鼻をかんで、粘膜を傷つけて鼻出血が起こる場合もありますので、きちんと治療して、しっかりと症状を抑えることが大切です。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)
日本人の約2人~4人に1人が花粉症だといわれます。花粉症はスギやヒノキなどの花粉が原因で、主にくしゃみ・鼻水・鼻づまりが生じるアレルギーです。目や皮膚など他の臓器にも症状があらわれることもあります。ダニなどの原因で1年を通して症状があらわれる通年性アレルギー性鼻炎に対して、花粉症は季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。飛散期は花粉症全体の約7割を占めるとされるスギ花粉症は東京では、2〜4月、ヒノキは4〜5月、シラカバ(シラカンバ)は4〜6月、カモガヤは5〜8月、ブタクサやヨモギは8〜10月頃とされています。
【出展】鳥居薬品株式会社「よくわかる!アレルギー性鼻炎BOOK」より
症状は、水のような「鼻水」と繰り返す「くしゃみ」、「鼻づまり」が3大主徴です。鼻に近い目にもかゆみや異物感が生じ、花粉飛散量に比例して症状が悪化する傾向があります。鼻症状は呼吸がしづらくなるため、集中力の低下やよく眠れないなど、勉強や仕事、家事に大きな影響を及ぼします。花粉症の人が果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどがあらわれる口腔アレルギー症候群になる場合があります。
花粉症と食物アレルギーが合わさった口腔アレルギー症候群ではアナフィラキシー反応が生じる場合があり、医師の正確な診断・治療が必要となります。
アレルギー検査
当院ではアレルギー検査を血液検査でご用意しております。
アレルギー症状を引き起こしているアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を知ることで、アレルギー予防対策やアレルギー症状の治療の方針に役立ちます。
症状が出ている方は個々の状態とご希望にあわせて最適な検査を実施することができますのでお気軽にご相談ください。
IgE検査(RISTとRAST)
IgE検査は、大きく2つにわかれます。
1つは、すべてのアレルゲンに対するIgE抗体をはかる方法で「非特異的IgE検査(IgE RIST)」とよばれます。
そしてもう1つが、アレルゲンごとの IgE値をはかる「特異的 IgE検査(IgE RAST)」ともよばれます。つまり、アレルゲンごと、それぞれに反応するIgE抗体の量を調べるわけです。
IgE検査で調べられるアレルゲンは、ハウスダスト、ダニ、カビ、スギ、ヒノキ、ハンノキ、イネ科、ブタクサ、ヨモギ、食品、動物、昆虫、ハチ毒、薬品、天然ゴムなど種類もあります。
MAST48とは
MAST48という広範囲スクリーニング的な検査も実施しております。
これは一度に48種類のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を調べることができる大変便利な検査です。
- 少量の血液(血清0.5ml)で検査ができます。
- 1度の検査で48項目もの原因を調べることができます。
- 特定原材料7品目(加工食品への原材料表示義務のある卵・乳・小麦・落花生・エビ・カニ・ソバ)を全て検査できます。
View39とは
View39は39種類の主要なアレルゲンを検査できます。問診や臨床所見からではアレルゲンの推定が難しい方に多項目同時測定のスクリーニング検査としてのアレルギー検査です。
- 少量の血液(血清0.9ml)で検査ができます。
- 1度の検査で39項目もの原因を調べることができます。
- 特定原材料20品目を含んでおり、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)も検査することができます。
【出典】Thermo Fisher Scientific社
舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の治療法のひとつに、アレルゲン免疫療法(減感作療法)があります。
アレルゲン免疫療法は、古くは、減感作療法とも呼ばれ、100年以上も前から行われている治療法で、アレルギーの原因である「アレルゲン」を少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる、あるいは、治す可能性のある治療法と考えられています。以前は、アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が行われていましたが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で、より安全に服用できるようになりました。
アレルギー症状のある疾患のうち、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などに対してこの治療法が行われています。
「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。
舌下免疫療法の2薬剤
- シダキュア
スギ花粉症のアレルゲン免疫療法の舌下錠です。
- ミティキュア
ダニアレルギーのアレルゲン免疫療法の舌下錠です。
2薬剤を同時に治療をすることも可能です。
1日1回、少量の治療薬から服用をはじめ、その後決められた一定量を数年間にわたり継続して服用します。
【出展】鳥居薬品株式会社「よくわかる!アレルギー性鼻炎BOOK」より
初めての服用は、医療機関で医師の監督のもと行い、2日目からは自宅で服用します。
治療薬を舌の下に置き、おくすりごとに定められた時間保持したあと、飲み込みます。その後5分間はうがい・飲食を控えます。
※スギ花粉症の場合、スギ花粉が飛んでいない時期も含め、毎日服用します。
長期にわたり、正しく治療が行われると、アレルギー症状を治したり、長期にわたり症状をおさえる効果が期待できます。
症状が完全におさえられない場合でも、症状を和らげ、アレルギー治療薬の減量が期待できます。
花粉-食物アレルギー症候群:PFAS (pollen-food allergy syndrome)
口腔アレルギー症候群: OAS (oral allergy syndrome)
花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)や口腔アレルギー症候群(OAS)とは、特定の野菜や果物を摂取した直後~15分以内に、口の中、唇、舌、のどがかゆくなったり、刺激感(イガイガ・チクチク)、腫れたり、息苦しくなったりするなどの症状が現れることをいいます。
これはもともと花粉症の人が、のちにその花粉のアレルゲンと交差反応する生の果物や野菜を摂取したときに口やのどの粘膜で起こるアレルギー症状です。軽微な症状が多いのですが、まれに生命に危険なアナフィラキシーショックにつながる場合もあります。
特にハンノキやシラカンバ(白樺)など、カバノキ科の花粉症の人の中で20~40%にバラ科のリンゴやサクランボ、桃を食べたときに症状がみられます。同様のことが、イネ科の雑草やブタクサ花粉症の人がウリ科のメロンやスイカを食べたときに症状が現れることがあります。
豆乳アレルギーとハンノキやシラカンバ)などカバノキ科の花粉症
PFASは口腔症状など比較的軽い症状で済むことが多いのですが、中には重篤なケースもみられます。特に液体である豆乳は一度に大量に摂取することができることもあり原因となるGly m 4により全身的な症状が出ることがありますので、ハンノキやシラカンバなどのカバノキ科の花粉症の方は注意が必要です。
交差抗原性が確認されているさまざまなアレルゲン
花粉と果物・野菜で見られる花粉-食物アレルギー症候群のほかにも、さまざまなアレルゲンで交差抗原性があります。
【出典】Thermo Fisher Scientific社
ラテックスーフルーツ症候群:ラテックスと果物
ラテックス(天然ゴム)アレルギーを持つ人は、果物を食べることで口がピリピリする症状から、重度な症状が起こることがあります。
バナナ、キウイ、アボカド、クリとそれらの加工品によることがあります。
納豆アレルギーとクラゲ
納豆アレルギーは、サーフィンやダイビングなどのマリンスポーツを愛好する方に多くみられます。
その理由は、納豆の粘り気の成分がクラゲの触手にも存在する(交差抗原性がある)ことから、クラゲに刺されたことと関連していると考えられています。